代理人交渉を巡る問題について

代理人交渉を巡る問題の現状についてご紹介します。

   ここでは、代理人交渉を巡る問題の現状について、公正取引委員会により、2024年9月19日になされた日本プロフェッショナル野球組織(以下「NPB」といいます。)に対する代理人に関する規制についての警告の内容と合わせてご説明いたします。

1. 公正取引委員会からのNPBに対する警告の概要

2024年9月19日、NPBが実施してきた代理人に関する規制について、公正取引委員会より警告が発出されました。警告に至る経緯、選手会としての取り組み、警告の具体的内容及び今後の方針について説明いたします。

2. 警告に至る経緯

選手会が、選手と球団の間のフェアな交渉を手助けする代理人の必要性を訴えた結果、2000年オフより、日本人選手に関する代理人制度が導入されました。しかし、NPBが、以下の条件付きでの導入を譲らなかったため、20年以上にわたり代理人による選手契約交渉は大きな制限を受けてきました。

①代理人は日本弁護士連合会所属の日本人弁護士に限る。
②一人の代理人が複数の選手と契約することは認められない。

3. 選手会の取り組み

選手会としては、選手代理人業務の健全な発展を促進するため、2000年に選手会公認代理人制度を導入し、NPBに当該制度の承認と健全な発展への協力を求めてきましたが、今もこれは受け入れられていません。
また、選手会は、選手が代理人を自由に選択できるよう、NPBに対して、上記代理人規制の見直し等を求めていましたが、NPBがこれに応じることはありませんでした。
NPBのこのような対応により、選手が代理人を自由に選択できない結果、代理人の利用も進んでいないという状況がありました。
NPBは、他のスポーツでは見られない長期にわたる移籍の制限と、これらの代理人利用に対する不当な制限により、選手の自由を大幅に制約してきたということになります。

4. 公正取引委員会の判断と警告

このような状況にあった、2024年8月、公正取引委員会は上記代理人規制の適法性について審査を開始し、独占禁止法第8条第4号(事業者団体による構成事業者の機能又は活動の不当な制限の禁止)に違反する可能性があると判断しました。
これを受け、NPBは2024年9月2日に当該規制を撤廃することを決定し、2024年9月19日、公正取引委員会は、NPBに対し、今後本件規制と同じような規制を行わないよう求める警告を発出しました。
選手会としては、上記のとおり、かねてより選手が代理人を自由に選択できるよう、NPBに対して、規制見直しを求めてきた経緯がありますので、公正取引委員会による今回の処分を歓迎しています。
かかる公正取引委員会の判断を受けて、今後は、①選手が弁護士以外の者を自らの代理人として選任することも、②一人の代理人が複数の選手と契約して交渉を行うことも許容されることになりますが、NPBは、「本年2024年のシーズンオフからは、各球団が、これらを適切に判断して選手契約に臨むことになります」と公表するにとどまっているため、球団の対応については、引き続き注視していく必要があります。

5. 今後の方針

選手会は、今回の警告を契機として、代理人を利用したいと考える選手が増えることも想定されるところ、より一層代理人制度の適切な発展を目指す活動を推進し、選手が代理人を活用しやすい環境の整備に努めてまいります。
そのために、選手や代理人の皆様へのヒアリングや代理人交渉の実態調査を行い、代理人利用に対する不当な制限がなされるようなことがないように注視してまいります。
また、選手会公認代理人規約を前提に、代理人についての登録制度(弁護士のみならずMLB選手会登録代理人やマネジメント会社を含む。)に基づき代理人に対する審査を実施し、かつ、ガイドライン等を設けることで、代理人の適正性を担保します。
一方で、定期的に各種研修等を実施することで公認代理人の皆様をサポートし、公認代理人の皆様との情報共有を含めた連携強化に努めてまいります。
このように選手会は、選手会公認代理人制度を軸として、球団と選手が対等なパートナーとしてフェアな契約更改・交渉に臨めるようにするために、様々な施策に取り組んでおります。同時に、健全な代理人制度の在り方について、NPBとの建設的な協議も進めていく所存です。